東京高等裁判所 昭和60年(ネ)91号 判決 1985年11月21日
控訴人 田口武
右訴訟代理人弁護士 竹下甫
鮎京眞知子
被控訴人 商工組合中央金庫
右代表者理事長 佐々木敏
右代理人支配人 奥平次男
右訴訟代理人弁護士 鈴木清二
藤井冨弘
山本卓也
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
理由
当裁判所も被控訴人の本件請求は認容すべきものと判断する。その理由は、控訴人の当審主張について次のとおり付加するほか原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
「控訴人は、控訴人の造成工事によつて生じた本件土地の増価額について被控訴人は不当に利得することになるなどとし、この点においても被控訴人の配当異議の主張は信義則違反ないし権利の濫用である旨主張するが、被控訴人において、控訴人が民法三三八条一項所定の登記手続を履践することを妨げる行為に出るなどして、ことさらに控訴人の造成工事による増価額についての控訴人の権利の保全を妨害し、もつて、右増価額からも自己の債権の回収を図ろうとした等の事情が存する場合は格別、かかる事情の認められない本件にあつては、右増価額が被控訴人に配当されることになるとしても、それは、専ら、控訴人が右三三八条一項の定める登記をせず、自らの権利の保全を怠つたことの反射的結果であつてもとより適法というほかはなく、被控訴人が右増価額を不当に利得するとして非難されるべきいわれはないから、被控訴人の配当異議の主張をもつて信義則違反あるいは権利の濫用ということはできない。」
よつて、原判決は相当であり、本件控訴は失当であるからこれを棄却
(裁判長裁判官 髙野耕一 裁判官 南新吾 根本眞)